モンクレール◇原発の風評被害が直撃 立て直しへ難問山積 「心配ない、と説明しても『福島は福島だから』と……。首都圏でキャンペーンをすると、励ましはいただくのですが、客足はなかなか戻りません」 会津若松市の奥座敷、芦ノ牧温泉観光協会の星弘子会長はため息をつく。同温泉の4~5月の一般客の宿泊は前年比6割減。東山温泉と合わせてもこの間の宿泊客は5万1228人で、前年より約8万人も減った。震災直後の自粛ムードは解けても、福島第1原発事故による風評被害が観光を直撃している。 宿泊だけではない。屋根を赤瓦にふき替え、誘客効果が期待された鶴ケ城の入場者も3割減。武家屋敷や白虎隊記念館などの民間施設、県立博物館は6割減の惨状だ。 象徴的なのが、修学旅行など小中学生の「教育旅行」の激減だ。昨年4~7月、県外から530校4万3074人が訪れたのに対し、今年は27校2346人と20分の1。秋の予約も前年の311校に対し44校にとどまる。 市や市内258の観光関連業者が加盟する会津若松観光物産協会は、常連だった千葉、埼玉、宮城県などを重点に「会津は安全」と説得する行脚を続けるが、反応ははかばかしくない。協会の渋谷民男統括本部長は「学校側の理解は得られても、学校が保護者すべてを納得させられるかは、また別の問題」と難しさを指摘する。放射性物質の拡散で首都圏の保護者たちの心に刻まれた放射線への恐怖は、簡単には消せないとみている。 一方で、原発事故からの避難者の存在が苦しい業界を支えるという皮肉な現実もある。2次避難所になった同市内の旅館、ホテルには4月以降、大熊、楢葉両町民を中心に多い時で3600人が避難し、現在も1700人が暮らす。この間、県は災害救助法に基づき、1人当たり1日5000円を旅館側に支払い続けており、10億円規模の公費が投入された。しかし、県のスケジュールでは、2次避難所は8月末で役割を終える。 国の原子力損害賠償紛争審査会は県内観光業の風評被害を賠償対象とする指針を示しており、同市内の被害も救済が見込める。また、13年のNHK大河ドラマが旧会津藩出身の山本八重を主人公にした「八重の桜」に決まり、大規模誘客キャンペーンも予定される。 星さんは「先行きに明るさも見えるが、それまでどう耐えていくか。9月からが正念場。机上で考えるのではなく、現場感覚が大事。入湯税をすべて観光対策に使うぐらいの積極対応がほしい」と新市長に注文をつける。渋谷さんも「会津との出会いとなる教育旅行は、会津ファンをつくる契機。各学校が来年の旅行日程を決めてからでは遅い。今こそ官民一体で知恵を出さなくては」と危機感を募らせる。 経済波及効果の大きい観光の低迷は、他産業にも影響を与えている。約2000人が働く同市の宿泊業界では4月以降、すでに150人が職を失った。苦境にあえぐ観光の立て直し。7日に誕生する新市長は、いきなり難問に直面する。  *  *  * かつて経験したことのない災害の年に告示された会津若松市長選。同市が抱える課題を探る。【太田穣】8月4日朝刊来る11月2日(水)、チャンミ